育児真っ最中のみなさんは「自己肯定感」という言葉を見たり、聞いたりしたことがあると思います。最近の育児雑誌、番組をはじめ、社会人向けのセミナーなどでもこの「自己肯定感」という言葉が多く取り上げられています。
私たち親世代が子供のころには聞いたことがない言葉がなぜ今、注目されているのでしょう。
実は、国レベルの様々な調査の結果、国際社会においてトップレベルの学力を持つ日本人の子供たちは、諸外国に比べると自己肯定感が低いという事実が判明したのです。
自己肯定感が低いとどうなるのか?また、そんな子供たちの将来のために親の私たちがしてあげられることは何か?ということに焦点を置いてお話していきたいと思います。
目次
「自分自身に満足していない」現代の日本人の子供たち
平成25年度に内閣府の委託による、日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの7か国の13歳から29歳の若者を対象にした意識調査によると、「自分自身に満足している」という質問に「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と答えた日本人はわずか約4割強でした。一方、上記の日本以外の諸外国の若者たちの割合はいずれも7割以上です。
また、「つまらない、やる気が出ないと感じたことがあるか」という問いに対し、「あった」「どちらかといえばあった」と回答した日本人の若者は約7割強、日本以外の国はそれ以下で、アメリカ、ドイツ、フランスに至っては5割にも満たないのです。
他の項目からも全体的に日本人の子供たちは自己肯定感が低いという現状が浮かび上がりました。政府はこの調査などの結果をもとに子ども・若者育成支援推進法の大綱を総点検したそうです。そして、今後新たな大綱を作成の予定とのことです。
なるほど、私も今の子供たちに対して、「外へ」というよりは「内へ」、チャレンジするよりは無難な方を好むような傾向があるという印象を持っています。それにしても、つまらない、やる気が出ないと感じたことがある若者が7割以上もいたという事実に驚きました。13歳から29歳といえば、毎日が楽しくって仕方がない時期が大半なのに…!
中には既婚者、育児中の若者もいるかと思いますが、全体数においての割合としては多くはないと思います。そして、それは同じ調査対象である諸外国でも同じだと思います。
では、なぜ、日本人の多くの若者たちは自己肯定感が低いのでしょうか?
なぜ日本の子供たちは自己肯定感が低いのか
様々な分析結果がありますが、日本だけの特徴でみると2つの原因があるとされています。
自己肯定感が低い理由① 学校教育
日本の教育方針は「協調性」に重点が置かれており、規律を守らなければならないという集団行動を強いられています。さらに、学習においては1つの答えが正解だと教えられ、違う答えの出し方はあまり認められない傾向にあります。
つまり、「人と違うことをしてはいけない」と幼少期から日本人の子供たちは教えられてきているため、1つの正解からはみ出てしまうとそれは「不正解」と判断され、受け入れてもらえない疎外感を感じます。そうすると、子供たちは1つの正解を求めるようになり、はみ出さないようにと気を付けるようになります。
また、日本の学校では、先生からの一方通行の講義型の授業を長年にわたり行ってきました。それでは、子供たちの学習意欲が沸くわけはなく、言われたことをそのまま受動的に聞く姿勢になります。もちろん、国際社会の多くの先進国ではこのような受け身の授業は行われていません。
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そのため、日本では現在、アクティブラーニングという授業スタイルをとるようになってきています。先生が主体的に授業をするのではなく、生徒たちが能動的に授業を作り上げていくスタイルです。このスタイルだと、1つの正解を示されることはなく、みんなそれぞれの意見が言いやすい環境になります。
私は子供たちに英語を教える仕事をしています。少人数のクラスということもあり、すでに5年前からこのアクティブラーニングスタイルをとっています。先生は、オーケストラで例えて言えば「指揮者」です。子供たち、つまり「奏者」に指示は出しますが、やり方は自由です。自分の思っていたのと違ったやり方をしていてもそれが良ければ、「それ、いいね!」と認めてあげます。
例えば、小学校中学年以上だと、先生は宿題をやってきたかどうかをチェックするのみで間違いは直しません。子供たち同士でお互いにチェックしあうように言います。小学校高学年以上は、先生が状況を提示し、子供たちは話し合い、ロールプレイをします。中学生以上はディスカッションのテーマを先生が提示して、それについて自分はどう思うかを自由に話させます。
子供たちはみんな当初、思うようにできませんでした。中学生ですら、どうやって自分の意見を言ったらよいのか、と戸惑っているようでした。(しかも、英語で)何回も「どんなことを言っても間違いではない」ということを伝えました。「万が一、間違っていたとあとでわかっても、それはいけないことではない。むしろ、今、ここで気がついたことは良いことだ」と言い続けました。
戸惑っていた原因が、「英語でどうやって言えばいいかわからない」というよりは本当に「どうやって(自分の考えを)言えばいいかわからない」という印象でした。たまたま、私の生徒さんがそういうおとなしい子ばかりだった、ということやお年頃、ということも考えられますが、おそらく多くの中学生はこのように戸惑うのではないかと思います。
小学校中学年の子が「どうやって友だちのホームワークの丸付けをすればいいの?」と○を付ける位置にすら戸惑っていたのも印象に残っています。「では、自分ならどうやって〇をつけてもらったり、スペリングを書き直されていたら分かりやすいかな?」と自分で考えさせました。
日本の学校教育で子供たちに刻まれた「人と違ってはいけない」「間違ってはいけない」という概念がとっても根深いものだと感じました。
自己肯定感が低い理由② 謙虚な国民性
日本の国技、相撲では勝者はその喜びの気持ちを表すガッツポーズをすることを禁止されています。敗者への思いやりに欠ける行為だとされているためです。確かに、「思いやりを持つ」、「他人に迷惑をかけない」、「謙遜する」という慣習は日本人としては美徳とされ、私たちも子供のころからそう教えられてきました。
「つまらないものですが…」と言って、何時間もかかって悩んだ贈り物を渡したり、「いやいや、そんなことないですよ~」とほめてもらえたにもかかわらずそう答える人。日本ではいたるところで見られる光景ですね。
一方、国際社会ではどうかというと、「つまらないもの」に近い表現をするものの決して否定的な表現をしながらプレゼントを渡したりはしません。ほめられたら素直に「ありがとう」と言います。
日本の文化的社会的背景が、日本人の自己肯定感が低い原因にもなっている。というのが、専門家による分析結果のようですが、今さら歴史を大きく塗りかえることはできませんし、古くからある慣習をひっくり返すこともできません。
ならば、今の私たちにできることは、現代を生きる私たちの感覚で少しでも自己肯定感を高めていくしかないのです。
子供の自己肯定感を高めるために、私たち親ができることは何か
ズバリ、まずは、私たち大人がもっと自分のことを認めてあげましょう。
前述の調査にはこのような問いもありました。「あなたは、自分の将来について明るい希望を持っていますか」という質問に対して「希望がある」「どちらかといえば希望がある」と答えた日本人の若者は約6割です。なんか、とても寂しい結果です。
一方諸外国の若者は8割以上、アメリカ、スウェーデンは9割以上という驚異的な数字です。この差はいったい何なのでしょう。先にも述べたように、教育システムと慣習の違いはあるとは思いますが、それにしても日本人の子供たちの4割近くが「希望を持てない」と感じてしまっているということは決して楽観できることではありませんね。
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今の日本の社会に目を向けてみましょう。今、日本の大人たちはとても疲れています。政治経済、高齢化に対する社会的不安や家庭内の不安もあり、日本社会全体的にどんよりしています。子供たちは自分のそばにいる大人たちの表情をよーく見ています。
もし、自分のパパやママが毎日「あー疲れたー」と子供の前で言ったり、「仕事が忙しい」と家庭をかえりみないような態度をしていたら。幸せそうに見えない親の姿を目の当たりにしているとしたら。…それは、子供たちに「希望を持て!」といっても難しいかもしれませんね。
人間は完ぺきではありません。自分の理想通りになるのは大変難しいと思います。まずは、そのことを自分で受け入れましょう。
良いママになれなくたっていいんです。ママ自身が理想としているママと、子供にとって良いママというのは必ずしも一致するとは限りません。自分自身に自信がなくなっているママは、ぎゅーっと我が子を抱きしめてあげましょう。そうするだけで、言葉以上に伝わるものがあります。我が子はママが悲しい気持ちだと察すると、ハッピーにしてあげようとありったけの力を見せてくれますよ。
仕事も家庭もどちらも両立できる完ぺきなパパなんて居ません。家族に聞いてみましょう。きっと「そのままのパパでいいよ」と言ってくれると思います。もしかしたら、子供たちからは「もっと一緒にいたい」と言われるかもしれませんけどね。
私たち大人が、ありのままの自分自身を受け入れて自己肯定感を高めることができると、自ずと子供たちも将来に希望を持てるようになるのではないかと思います。
まとめ
子供たちに教えてあげましょう。「失敗してもいいんだよ」「正解は一つとは限らないんだよ」「完ぺきな人間なんていないんだよ」ということを。根拠のない自信は子供の最強の武器です。その根拠のない自信を成長と共に失うことのないように、大人はサポートしてあげなければいけません。
「できた!」と嬉しそうに喜んでいる子供の笑顔って、あらゆる邪悪なものを吹き飛ばすパワーがありますよね。子供の成長と共に親は多くを子どもに求めてしまうようになってしまいます。自分を認めてあげたように、我が子のできないことには目を向けず、できたことを全力で認めて、ほめてあげましょう。
自分を認めてあげるなんて難しい、という大人もいると思います。最初はそのフリだけでも良いと思います。そうすれば、きっと子供たちの意識も変わってくるのではないかなと思います。親が子供に与える影響は、自分で思っている以上に大きいものなのです。
自分を変えられるのは自分自身です。大人であるあなたも自分自身をたくさん褒めてあげましょう!